良性の脳腫瘍 無症候性髄膜腫 身近な病気、冷静に対処を関連カテゴリ >> 脳・神経
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検査機器の普及により、頭痛や手足のまひなどの自覚症状が出ていない段階で、良性の脳腫瘍[しゅよう]の一つである「無症候性髄膜腫」と診断される人が増えている。県内で見つかった自覚症状がない脳腫瘍患者の約7割を占める。診断後に「怖くて眠れない」「仕事が手に付かない」と、不安やストレスを訴える患者も多いという。熊本大病院の倉津純一・脳神経外科教授は「大半は進行が遅く、即手術というケースはまれ。不安を抱えながら過ごす必要はない」と話す。
2009年、県内の医療機関で髄膜腫と診断され、倉津教授に連絡があった患者は159人。このうち無症候性は107人で、3分の2を占める。1989年は58人中11人で、CT(コンピューター断層撮影装置)とMRI(磁気共鳴画像装置)の普及で、発見例は格段に増加。無症候性髄膜腫が身近な病気であることが分かったとも言える。
髄膜腫は脳を包む硬膜から発生し、脳そのものからは発生しない。高齢の女性に多い。患者は症状がなく脳の病気と予想していないため、大きな影がある脳の画像を示され、「脳腫瘍の一種」と聞いた時のショックは大きいという。
しかし、倉津教授は「これまでは、腫瘍があることも知らないまま、ほとんどの患者が他の原因で一生を終えていた」と説明する。米国の調査では、脳腫瘍以外の病気で死亡した患者1万33人を解剖した結果、2・3%の231人に無症候性髄膜腫があったというデータもある。
髄膜腫の進行は、年間2ミリ程度と遅く、高齢者の場合は大きくなっても脳への圧迫の程度が少ないため手術が要らないケースもある。手術すれば治癒が期待できるが、免疫力が低下している高齢者の場合は合併症も考慮しなければならない。同病院のデータでは、無症候性髄膜腫の手術で、70歳未満では3カ月以上継続した合併症が4・4%だったのに対し、70歳以上では9・4%に上昇している。
「40歳で2センチあれば手術を勧めるが、70歳を超えた患者は合併症などの情報を十分に伝えて方針を話し合う。高齢者は、自分が考えている余命と照らすことにもなる」と倉津教授。高齢者は「脳の病は不治の病」という思い込みが強いため、説明しても不安を解消させることは難しいという。
倉津教授は「患者は、医療や医療機器の発達に伴って自分の体の情報をいち早く手に入れ、病気との向き合い方を選択できるようになってきた。しかし、かえってストレスがたまり、生活の質が落ちることになるなら本末転倒」と指摘する。「無症候性髄膜症は、良性で身近な病気であることが一般の認識として浸透すれば、患者の不安も軽減し、手術する、しないといった判断の際にも、冷静になれるのではないか」(東寛明)
(熊本日日新聞 2010年7月30日朝刊掲載)
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