認知症対策「熊本モデル」の試み

(下)「不安和らげる」介護、支援体制 地域拠点づくり課題

認知症に関する電話相談を受け付ける「認知症ほっとコール」のポスター。患者や家族にとって相談先の確保は重要な問題だ

 県認知症疾患医療センターは、熊本大病院と各地の精神科病院を中心とした医療体制。これと並ぶ認知症対策の柱として、県長寿社会局は介護体制、地域支援体制を掲げる。


●チームで支える


「本人や家族の不安を和らげることが何よりも大切」。宇土市地域包括支援センターの宮下麻衣子・主任介護支援専門員が、認知症と向き合う姿勢だ。


 宇土市の同センターは、県内7カ所の認知症対応強化型地域包括支援センターの一つ。地域拠点型センターの精神科病院と一緒に、中核的な役割を担う。


 総合窓口の地域包括支援センターだが、「最初から『専門医に診てもらいたい』という相談は少ない」と宮下さん。「気になる人がいる」といった民生委員らの情報をきっかけに、患者本人との関係づくりに入ることも多い。そこから、かかりつけ医への相談を促し、専門医を受診。その一つ一つの場に立ち会うのが常という。


 「受診からサービス手続き、適切なケアへのガイド役。『どうしたらいいのか』と混乱する患者・家族に、私たちがチームで支えるという状況を具体的に感じ取ってもらう」。介護体制の要であり、医療機関のパイプ役も果たしている。


 ただ、強化型としての役割は、宇土市だけでなく宇城地域全体の各地域包括支援センターや介護施設、医療機関との連携・調整。国のモデル事業として専従の連携担当者1人を配置する予算が確保されている。しかし、地元対応で手いっぱいで、これは他地域の強化型も同じ状況だ。県は「未指定の地域包括支援センターにも、強化型の体制を広げることが望ましい」との考えに立つ。


 一方、認知症疾患医療センターと同じ2009年7月スタートの電話相談「認知症ほっとコール」が地域支援体制の柱だ。県が「認知症の人と家族の会県支部」に委託、介護経験のある家族らが応じている。


 「認知症のばあちゃん(義母)を夫が殴る」「介護に切羽詰まって、家族が参ってしまいそう」...。さまざまな相談が寄せられるが、「多くの家族が、家庭内だけで対応し認知症に振り回されている」と事務局の冨岡大高さん。地域拠点型センターの精神科病院などを紹介するが、中には患者の自主的な受診が難しく、強化型の地域包括支援センターに対応を依頼することもあるという。


 6月末まで1年間の相談件数は491件で月30~40件。潜在的なニーズを掘り起こすため、県も周知に力を入れている。


●必要なセンター増


 動き出した県内の認知症対策だが、大きな課題が地域ごとの体制のばらつきだ。県は現在7カ所の地域拠点型センターの増設を検討している。


 県人口の4割が集中する熊本市も、精神科病院の地域拠点型センター、認知症対応強化型地域包括支援センターとも他地域と同じ各1カ所のみ。しかし、政令市移行を控え、県は今後の判断を熊本市に引き継ぐ姿勢だ。


 市高齢介護福祉課は「市として認知症疾患医療センターの検討にはまだ着手していない。検討中の小学校区ごとの地域ケア計画策定を急ぎ、認知症の対応マニュアルなど体制づくりを進める。その上で医療機関と連携を構築したい」としている。


 医師として実践経験を積んできた東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一研究部長は、「熊本モデル」を総括して、「将来を見据えた認知症対策の理想型」と評価。特徴として「対応できる人材育成と、拠点となる病院を身近に配置した点」を挙げる。


 都市部の体制づくりは全国共通の課題と分析しているが、「政令市として積極的に取り組んでほしい。熊本なら、都市型モデルができるはず」と期待。今後の動きにも注目している。(小多崇)

 

(熊本日日新聞 2010年7月24日朝刊掲載)

関連する記事を探す
ジャンル脳・神経(認知症・脳活性化)
診療科目 
キーワード認知症
[PR]
フリーワードで探す
   例)「糖尿病 予防」など

新着医療記事

一覧

医療連載

もう一つの乱用 処方薬依存
薬物依存。芸能人の覚せい剤使用などでその広がりがあらためて浮き彫りとなったが、"もう一つ"の薬物依存も身近な所で増えている。
新型インフルエンザ
メキシコなどで発生した豚インフルエンザの人への感染。世界保健機関(WHO)は2009年4月28日、新型インフルエンザ発生の認定を意味する「フェーズ4」に警戒水準を引き上げた。
けんこう立ち話
県内の医療・福祉現場でがんばっている人にインタビュー

文字の大きさ: ページカラー:

ママへの処方箋

インフルエンザ、水疱瘡・・・

いまの流行病

休みの日、開いている病院はどこ?

休日在宅医

「もしも」のために知っておきたい

心肺蘇生法

赤ちゃんとママに役立つ初歩的情報

赤ちゃんのあ

熊本県内の感染症情報

8月23日~8月29日

伝染性紅斑

ピックアップ

 熊本日日新聞社の山本晃記者は2009年夏、腎臓移植手術を受けた。闘病生活の思いや手術に至る経緯をつづる。
 写真や図解付きで、歯についての症状と治療法を分かりやすく解説します。

医療記事を探す

 くまにちカテゴリから記事を探す

がん

心臓・血管

感染症

くすり

呼吸器

脳・神経

糖尿病

こころ

消化器

骨・関節

こども

女性

男性

高齢者

アレルギー

皮膚

泌尿器

耳・鼻・のど

難病

移植医療

地域医療

質・安全

緩和ケア

その他

 
 病名・症状・くすりから記事を探す

あ行 |

か行 |

さ行 |

すべて見る

 診療科目から記事を探す

| 外科 | 内科 | 産婦人科 |

| 小児科 | 歯科 | 精神科 |

| 循環器科 | 消化器科 |

すべて見る

注目記事ランキング(8月20日~8月26日)

全国の健康・医療ニュース(くまにちコム)

お役立ちリンク集

くまにちコムから

半額で泊まれる宿泊券!!
九州の新聞社が運営するサイト「九州温泉プレス」
くまもと生活応援紙「すぱいす*spice」
今週の特集は、嫁と姑にはさまれた男たちがホンネを語る座談会です
宿泊券やロアッソグッズが当たる!
熊日「夏だ!レジャーだ!スポーツだ!プレゼントキャンペーン」実施中
熊日記事データベース
88年以降の150万件を超える記事を蓄積しています
大学・短大・専修学校
「キャンパスGUIDE2011」
熊日読者に無料でお届け!