非アルコール性脂肪性肝炎 難しい脂肪肝との鑑別

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 酒を飲まなかったり、ごくたまに少量飲むだけの人が、アルコール性肝炎と同じような肝臓の状態になる病気がある。「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)と呼ばれ、症状がほとんどないまま肝硬変、肝がんへと進行していく。脂肪肝との鑑別が容易でなく、見過ごされるケースも少なくないという。

 二段階で発病

 「酒を飲む人の肝臓に脂肪がたまって脂肪肝の状態になると、アルコール性肝炎から肝硬変へと進むが、飲まない人の脂肪肝は悪化しないというのがかつての常識。しかし、これは違います。一部の人では肝硬変、肝がんへと進行します」

 東京女子医科大(東京都新宿区)消化器病センターの橋本悦子・内科講師は、こう指摘する。現在、肝硬変や肝がんで原因不明とされたケースの相当数に、NASHが絡んでいる可能性があるという。

 飲まない人も、過食や運動不足などから中性脂肪が細胞に蓄積し、脂肪肝になっている人は少なくない。NASHは、これに第二段階の刺激である活性酸素によるストレスなどが加わって起きるとみられている。橋本講師は「単なる脂肪肝と診断された人の中に埋没したNASH患者を掘り起こし、適切に治療する必要がある」と警鐘を鳴らす。

 病理検査が確実

 現在、NASHの確実な診断は、肝臓組織の一部を採取して顕微鏡で調べる病理検査しかない。患者は、脂肪の蓄積以外に炎症の所見が出る。ただ病理検査にはわずかだが危険性もある。このため、橋本講師は、画像診断で肝臓の脂肪蓄積が分かった人で(1)高齢や肥満(2)血液検査で特徴的な傾向がある(3)肝機能が低下しているの条件を満たす場合に病理検査を勧める。こんな人は、肝細胞が壊れて硬くなる「線維化」が進んだNASHの可能性があるという。

 米国では、NASHは人口の2~3%。五十代前後の女性で、肥満や糖尿病、高脂血症などの人に多い。高度肥満の人の70%はNASHという調査結果もある。脂肪肝からNASHにはゆっくり進行するが、NASHと診断された人の五年後の生存率は約70%にとどまるという。

 日本では大規模調査などはまだ実施されていないが、東京女子医大の患者百十人のデータでも、女性は五十~六十代に多い。だが特徴的なのは、男性の四割を四十歳未満が占めていることだ。

 「ライフスタイルの欧米化で若年肥満が増えていることと関係しているのでは。彼らが中高年になるころには、患者が激増する恐れがある」。橋本講師の表情は厳しい。

 肥満解消が重要

 NASHの詳しい原因は未解明だが、糖尿病に関係する「インスリン抵抗性」が深くかかわっているとみられている。インスリン抵抗性は、糖代謝に関係するインスリンが効きにくくなる状態。肥満で細胞に脂肪が蓄積すると、その細胞が出す物質の作用で抵抗性が増す。この悪影響が肝臓に出たのがNASHではないかとの説だ。

 このため、治療でも糖尿病薬などがよく使われる。インスリン抵抗性改善薬や一部のビタミン、ウルソデオキシコール酸などの肝臓病薬により、脂肪肝や肝機能が改善したとの報告がある。

 しかし確立した治療法はまだない。橋本講師によると、最も重要で効果も高いのは、食事コントロールや運動による肥満の解消。「入院して食事や運動療法で改善する人は多い。日本人は遺伝的にも肥満に弱い人が多く、肥満との闘いは重要な課題」。橋本講師は、そう強調する。

 (熊本日日新聞2003年7月2日付夕刊掲載)
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